2012年2月28日火曜日

3か月を経て ―新澤醸造店―

12月に続いて、川崎蔵にもおじゃましました。
前回訪れたのが、ちょうど1か月ほど前です。

10か月前、「さいとう酒店」の斉藤さんとは三本木の蔵にいました。
その事を思い出すと、10か月後に川崎にいるというのは、とても不思議な感じがします。

ちょうど蒸し上がる時間に合わせて、蔵におじゃましました。
気持ち良く湯気が立ちあがっています。

クレーンが動いて、ネットに入った蒸米を次々に運んでいきます。
確かに、このやり方だと本当に早いですね。
ネットをクレーンのフックにひっかけるだけで、放冷機へ運んでいきます。
スピードアップと省力化がうまく両立しています。


ネットと蒸米が何層にも重ねられた様子は、
自分の知っていた甑とは違う表情。

米蔵、酒母室、麹室、仕込み室と順番に回りながら、新澤さんから細かく説明をしていただきました。
個人的には何度か教えていただいた話ですが、それを始めての人に丁寧に説明している様子を見ていると、自分でももう1回知識の整理になります。


麹の説明をしてくださる新澤さん。
意図的な温度の上げ下げが強い麹をつくるポイントになるそうで、そのために細かな温度管理が重要だそうです。
今に至るまでの10年間には多くの試行錯誤があったそうで、そんなこぼれ話も楽しく話してもらえました。


精米と精米機について、説明してくれる新澤さん。
酒造り1つ1つを説明できることが、本当に嬉しそう。懇切丁寧に説明してくれます。
10か月前には、お互いこんなに笑顔で話ができるなんて、予想もできませんでした。


今回の試飲は、純米吟醸と特別純米を2本ずつ。
以前のように糖度違いを細かく造るところまではまだ追いついていないのですが、近々タンク毎による糖度違いの造りにも取りかかるそうです。

細かな糖度の使い分け、それが「伯楽星」の真骨頂なのですから。


出荷場も見せてもらいました。
12月におじゃましてからのたった1か月の間に、P箱が天井に届きそうな勢いになっています。
造りが順調なようすが感じられます。みなさん生き生きと動いていますね。


最後に蔵の前で写真を撮りました。
新澤さんの嬉しそうな顔、蔵人さんのキビキビとした動きを見ていると、川崎の寒さは厳しいのですが、じんわりと温かい気持ちになりました。


最後に、千坂さんと杉原専務に見送っていただきました。
4月に札幌でお会いできるのが本当に楽しみです。

12月におじゃました時も思ったことですが、きっかけは震災ではあるものの、より品質の高いお酒を造るための、未来を見つめた移転だということを、改めて実感しました。

三本木の味わいのある蔵をご存じの方からすると、あまりにも機械的で味気なく感じるかもしれませんが、「お客様には酒の質でお返しする。」と断言する新澤醸造店にとっては、必要な移転であり、必要な機械化なのです。

これからも、「伯楽星」・「あたごのまつ」がどこまで新澤さんの理想の酒に近づけていくのか、本当に楽しみです。


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・「新澤醸造店(三本木本社)」
住所 〒989-6321宮城県大崎市三本木北町63
電話 0229-52-3002
・「新澤醸造店(川崎蔵)」
住所 〒989-1502宮城県柴田郡川崎町大字今宿字小銀沢山1-115

2012年2月27日月曜日

小僧山水とともに ―宮城栗原 金の井酒造―

宮城県栗原市。
先の3・11東北地方太平洋沖地震で、震度7を記録した地域です。

東北道を築館インターで降りてから、しばらく内陸の方に進んでいきます。
うっすらと雪に覆われた田園地帯を走っていくと、煙突が見えてきました。
金の井酒造です。

三浦社長とは、去年の5月にお会いして以来、蔵におじゃまするのは初めてです。
早速蔵の中に入ると、甑にコンベアがかけられ、翌朝の準備が進められていました。


すぐに麹室に入り、三浦社長から麹についての説明を受けます。
説明の途中に麹屋さんが入室されたので、さらに細かな説明をしてもらえました。
懐中電灯を当ててみると、1日違うだけで破精込み方が大きく違うのがわかります。


説明を受け、実際に麹に触ってみると、
温度がちょっと特徴的なのかなと思いました。

続いて、吟醸蔵に移動しました。

八反35の40%純米大吟醸などが並んでいましたが、書かれていた「ほの馥(ふく)」という酵母の名前が気になりました。
これは、県の産業技術総合センターで開発された酵母で、県内で積極的に使っていこうという動きになっているそうです。どんなお酒になるのか、興味があります。


続いて、酒母室と仕込み蔵を見せてもらいました。
この重厚な入口が、蔵の歴史を物語っているようです。


酒母室には、宮城酵母を中心に3本ほど並んでいました。
全体的に色が濃いような気がしたのですが、それは酵母と関係があるのでしょうか。
どの酒母も、とっても元気にブクブクわいています。

酒母を見た後は、仕込みタンクを順番に回りました。
足場がしっかりしているので、割と安心して歩くことができます。

1,000~1,200kg仕込みのタンクが多く、こちらも宮城酵母が中心でした。
あの黒澤米のもろみもありました。
酵母はほぼ統一されているのですが、米と精米歩合がタンクごとにかなり異なっていました。
賑やかにアピールする訳ではないのですが、細かく研究しながら造り分けている、そんな感じを受けました。


冷蔵庫にも入りました。1,800ml換算で37,000本入る冷蔵庫だそうです。
造りの規模からするとかなり大きな冷蔵庫ですね。
「宮城の酒」P箱が、これだけきれいに揃っている冷蔵庫もはじめて見たような気がします。
壮観です。


冷蔵庫側から蔵を見渡してみます。
すっかり周りは薄暗くなっていました。こうして見ると、本当に田舎の静かな蔵という感じです。
こんな静かな場所でお酒が造られているのが、なぜか不思議、そんな静けさです。



最後の試飲は、特別純米2種類と純米吟醸・純米大吟醸の4種類でした。
全体的に言えることは、始めの印象と温度が変わってからの表情が大きく変わってくることです。
温度変化と、これからの熟成の仕方など…、じっくりと味わっていきたいお酒だということを再確認しました。

準備が終わった甑の辺りは、ひっそりとしていました。
まるで明日への英気を養っているかのようでした。


自動車を運転しないと行きづらい場所にあるのですが、それだけの価値のある訪問でした。
これからも注目していきたいお酒です。


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・「金の井酒造」
住所 〒987-2303宮城県栗原市一迫川口町浦1-1
電話 0228-54-2115

2012年2月25日土曜日

宮城の蔵を巡る

少し前の話になるのですが、1月に千歳・札幌の酒販店さん・料飲店さんたちと、宮城県に行ってきました。

今回のメンバーは、
千歳「さいとう酒店ブログ)」の斉藤さん
札幌北34条「とりきん」の佐々木さん
札幌平岸「味処 高雄ブログ)」の綿谷さん
千歳「龍のす」の松田さん
と僕の5名。

まずは先発隊として僕が始発の飛行機で仙台に入りますが、雪のため、その時点で30分遅れでした。
新千歳空港にいた残りの4人は、一瞬あきらめていたらしいです。
一人で寂しく待っていたのに…


そんな心配もしつつ、1時間半遅れでみなさん無事到着です。
ほっとしたのか、この笑顔。


早速レンタカーを借りて、東北道を北上していきます。
目的地は綿屋を造られている、栗原市の金の井酒造。
一昨年の9月に高雄の大将が蔵元に伺い、去年の5月には「高雄」で蔵元さんを囲む会を開催した、身近な蔵元さんなのです。


綿屋を醸す男と、綿谷を名乗る男との真剣勝負。

じっくりと蔵見学をさせていただいた後は、急いで仙台に戻りホテルにチェックインし、今度は北仙台の仙台浅草へ向かいます。
「二喬」で新澤さんと合流し、宴の始まり。
今回も残響をいただいてしまいましたが、去年から何回呑んだのでしょう。
いいのかな。


ほろ酔い気分で、みんなで記念撮影。龍星さんありがとうございました。


2軒目は街中の居酒屋さんへ。
出てきたのは、新澤さんが「これだけは」と一押しの仙台せり鍋です。
昆布だしをはった鍋に鶏肉でさらに旨みを足して、そこにせりを入れて楽しむのです。

葉や茎だけではなく、根っこがとても美味しいのに一同びっくりです。嫌な苦みなどまったくありません。
どこか札幌のお店でもやってくれないでしょうか。


こんな不思議なタワーも出てきました。

仙台の居酒屋さんは、チェーンであっても宮城の地酒そろえて頑張っている店が多く、それはとても羨ましいことだと思いました。
さすが、純米酒宣言をする県です。

2日目はホテルから、川崎町の新澤醸造店川崎蔵へ向かいます。
ちょうど車に乗る時に地震が来ていたのですが、誰も気づかなかったようです…大丈夫なのでしょうか。


12月におじゃました時よりも、さらに蔵が活気づいていました。
生き生きと働きみなさんを見ていると、嬉しくなりました。
それにしても、川崎は寒かったです。

この後は、東京に向かう4人を仙台駅まで見送り、1人札幌に帰ってきました。


ひっそりと小さな飛行機で降り立つ、
夜の新千歳空港は寂しかったかもしれません。

それぞれの蔵については、後日個別に記しますね。


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・和酒バル「二喬/NIKYOブログ)」
住所 〒981-0913宮城県仙台市青葉区昭和町5-55
電話 022-728-2033
営業時間 18:00-23:00(ラストオーダー)、日曜日12:00-18:00/月曜定休