2012年1月29日日曜日

地酒BAR 膳 ―京都室町三条―

京都烏丸御池駅の近く、三条通を西に向かい室町通と交差する南西の角に、5階建てのビルがあります。
5階までエレベーターで上がると、ワンフロアすべてがペントハウス風のお店になっています。
今回の目的、「地酒BAR 膳」です。


木下善夫さんは、以前は別の仕事をしながら全国を回り、蔵元さんや酒屋さんとの交流を深めてきました。
その後京都で開かれた「地酒BAR 膳」は、何度か移転をくり返す度に木下さんの個性がより強くなっていきました。平成21年(2009)年12月18日に、今までの集大成として開かれたのが、今回のお店です。

木下さんは、昔の髪型から「パンチさん」として親しまれています。京都滋賀大阪の辺りでは、お燗ブラザーズの長男としても知られていますね。


「膳」のお酒は、無濾過生原酒を冷蔵庫で低温で寝かせた、いわゆる生熟のお酒です。しかし、寝かせる期間がこちらの常識を覆すような長さです。
ここに来ると、毎回ビックリするようなお酒に出会えるのですが、その中でも美味しかったお酒は、11年熟成した「瀧自慢」備前雄町純米吟醸7BYと、18年ほど熟成した「松の司」純米吟醸楽2BYでした。
蔵元さんにお話しすると「うちのお酒がそんなに長持ちするのですか?」とびっくりされます。どう保存されているのか、不思議です。

木下さんと言えば、「不老泉」です。
還暦のお祝い「座・燗暦の会」の時には、蔵元の上原さんがすべて特別ラベルのお酒を用意したのは有名な話です。それほどの強い繋がりがあるお2人です。
今回は同行者のために、入門編の不老泉をお願いしました。


毎回のアテと、マットに書かれた東海道の浮世絵も楽しみの一つです。
始めておじゃました時、自分の故郷の有松の浮世絵が出ていた時は、勝手に「膳」との強い縁を感じました。


冷蔵庫には、常時140種類ほどのお酒が入っています。
いつもながら、「どこでこのお酒を見つけてきたのですか?」と、ついつい聞いてしまうお酒ばかりです。
この日は2杯目に、「金鼓」純米吟醸8BYをいただきました。
ラベルの酵母を見てビックリします。よく今まで残っていましたね。


木下さんは、お酒が大好き。時には厳しい事も言いますが、その言葉の裏にはお酒への深い愛情が込められています。
静かなお店の中で、木下さんと楽しく酒談議をしていると、あっという間に12時を過ぎてしまい、終電を乗り過ごすほど。


京都に来たら、必ず〆におじゃましたいお店ですね。
でも、楽しいだけに呑みすぎ注意です。


――――
・「地酒BAR 膳」(ブログ
住所 〒604-8203京都市中京区室町通三条西入衣棚61-1三笠ビル5階
電話 075-241-4007
営業時間 電話で確認することをおススメします

2012年1月26日木曜日

蔵仕事を学ぶ 2日目 ―奈良御所 千代酒造―

1月5日、千代酒造2日目です。
蒸米が上がる時間を目指して蔵に向かいました。
6時半頃蔵に着くと、周りはまだ真っ暗です。

7時に蒸しあがるということで、休憩をとっていたみなさんも、徐々に集まってきました。
時間になったので、甑の覆いを外すと、爆発するかのように大量の蒸気があふれ出してきます。


始めは麹用の米が出てきました。
すぐに放冷機に移し、麹をふります。
麹を室でふるのか放冷中にふるのかは、米の種類や状態、仕込むもろみの種類などによって、変えているようです。


麹をふった蒸し米は、すぐに麹室に引き込まれます。
テンポ良く進む作業の様子から感じる、チームワークの良さは酒蔵ならではですね。


生もと用の掛け米は、仕込み場に持って行って冷まします。
夕方、生もとの仕込みがあるので、何度か手を入れて冷ましながら、米全体の温度を安定させていきます。


この後は、出荷のお手伝いをしました。
蔵ごとに箱詰めや、パレット上でのP箱の組み方などが違います。
こういうところも見ていておもしろいですね。


午後最初の仕事は洗米です。
考えてみると、半仕舞でも、毎日のように同じような作業が続きますね。
そして、作業が終わったらすぐに掃除。これはどこの蔵でも鉄則です。


午後3時頃になったので、生もとの仕込みに入ります。
まずは、先程の蒸米を量って正確に6等分し、6つの半切桶に分けてから、手を入れながら米の温度を下げていきます。


続いて、麹を投入し混ぜます。
最後にすべてを合わせた時の温度を計算しながらの作業なので、掛け米と麹の温度に気をつけながら混ぜていきます。


最後に水を加えます。
水温は5度以下なので、半切に水を入れられた瞬間悶絶します。
でも弱音を吐いてはいられません。


ひたすら手を入れて、このようにすべて均等になるようにします。
あまりの冷たさに、手が赤いのを通り越して、黒くなっていました。

翌日からの荒踏みや、もと摺りなどはできませんでしたが、これからどういう成長をしていくのか、とても楽しみです。
夏のお酒の会の目玉ができました。

少し休憩した後は、最後に麹室で麹に手を入れます。
先程の凍りつきそうな作業から、一転して汗だくの作業、いい加減なことをしていると、すぐに体調を崩しそうです。蔵人さんたちを尊敬すると共に、美味しいお酒を仕込んでもらえることに感謝です。


この後は温度管理をしながら、手を入れていきます。
蔵人さんの睡眠不足の理由が、麹の手入れ。
でも、手を抜けないところです。

朝6時半に蔵に入り、あっという間に夕方の17時を回っていました。
1日が本当に速いですね。

今回は2日間で、洗米・放冷・袋洗い・掛け米の手入れ・蒸し・出荷・生もとの仕込み、そして麹の手入れと、本当に多くのことをさせていただきました。
快く機会を作ってくださった、堺社長と千代酒造のみなさんに大変感謝しております。
ありがとうございました。

7月、北海道での千代酒造の会3連発、とっても楽しみにしています。


――――
・「千代酒造
住所:〒639-2312奈良県御所市櫛羅621
電話:0745-62-2301

2012年1月25日水曜日

蔵仕事を学ぶ 1日目 ―奈良御所 千代酒造―

葛城山が雪で白くなった1月4日、まだ正月気分も抜けないうちに、奈良県御所市の千代酒造におじゃましてきました。

今回は蔵仕事のお手伝いをさせていただけると言うことで、いつもと違ったワクワク感がありました。
前日はお酒を呑まないで、気持ちを引き締めたほどです。(それまで毎日呑みすぎただけです)

千代酒造は、「千代」「篠峯」「櫛羅」の3銘柄を造る、約500石くらいの蔵元さん。
堺社長に初めてお会いしたのは、平成20(2008)年4月27日(土)、東京大森の「吟吟」さんでした。
その年の7月に蔵におじゃまして以来、それからは毎年伺うようになりました。

堺社長が北海道出身という縁で、毎年7月には札幌で堺社長を囲む会を開催させていただいてます。そんな事もあり、自分にとっては身近な蔵元さんなのです。

近鉄御所駅からタクシーに乗り、しばらく走ると、だんだんのどかな光景が広がってきます。
白壁が見えてくると、そこが千代酒造です。

今回、最初の仕事が洗米です。
まずは生もと用の掛け米を洗うのですが、基本的に洗米機で洗うので、見ているだけです。
それでも米の投入から、洗米、浸漬までの流れを見ていると、酒造りの大切な工程だと言うことがわかります。
米が生きているようです。


大きめの洗米機だったので、あっさりと浸漬まで進みました。
今回は70%精米だったのですが、ここから低精米になればなるほど、浸漬時間が大幅に増えていくそうです。

午前中の洗米が終わったので、袋しぼり用の袋洗いをしました。
近々、純米吟醸の搾りがあるので、もう一度洗っておかなければなりません。


最初は櫂棒で大ざっぱに洗い、その後は11つ手洗いになります。
井戸水の水温が高いので、水の冷たさは気にならないのですが、ナイロン製の袋を何十枚も洗っていると、手の脂がとれてガサガサしてきます。2人で作業したので、おしゃべりしながらでしたが、1人でやっていたらくじけそうな単純作業でした。
全部洗ったら、さらに冷たい水でもう1度洗い、その後はアルコールにつけます。

休憩時間の間に、仕込み場の中を見せていただきました。
櫛羅純米吟醸のもろみ25日目、後数日です。かなり表面が落ち着いてきました。


篠峯八反純米吟醸のもろみ10日目、これからますます元気になってきます。
あまりの香りの良さに、思わずタンクに身を乗り出してしまいました。
鼻に強烈な刺激を受けてむせかえり、涙目になったのは言うまでもありません。


こちらは酒母です。今年は全体的に順調だそうです。
ムクムクと動く酒母を見ていると、生命力を感じますね。


午後からは、また洗米です。
大吟醸や純米吟醸用の米なので、1階の洗米機を使います。
千代酒造ではMJP方式の精米機を使用しているので、上から投入された米を大量の泡で洗い、一定の時間が過ぎたら、きれいな水ですすぐという手順で行います。

その後は浸漬になるのですが、午前中の70%の米と違い、40%や50%の米なので、その分だけ時間に厳しくなります。
ストップウォッチで時間を計ったら、機械に載せて、カゴの中の水分を真空にして抜きます。
そのおかげなのか、見た目は米が一段とさらさらになっているようです。


水を切った後は、翌日の蒸しに備えます。
実際に手を入れてみると、サラサラして気持ちがいいですね。


この日の作業が一段落したので、蔵の中をうろうろとしてみました。
翌日仕込む生もと用の麹、斗瓶、金賞酒を毎年仕込んでいるタンクなど、それぞれが出番を待っているようです。
蔵の中に、静かな闘志を感じます。


ピンと張りつめた冷たい空気の中、外に出てみると、タンクの跡が残っていました。
以前は大手の蔵に桶売りをしていたので、その名残です。
石高も現在の10倍あったそうです。


気がついたら、こんな時間になっていました。
この日は堺社長と橿原の街に出て、楽しいお話をしながら軽く1杯。次の日の活力を補充してきました。


今回はお手伝いをさせていただいたのですが、自分の写真が1枚もないので、写真に登場している方は、堺社長と蔵人さんのみなさんです。


――――
・「千代酒造
住所:〒639-2312奈良県御所市櫛羅621
電話:0745-62-2301