2011年10月31日月曜日

気仙の酒「酔仙」 ―酔仙酒造―

10月10日、一関市千厩にある「岩手銘醸 玉の春工場」におじゃましました。


こちらは以前「玉の春」の醸造元であった横屋酒造の建物であり、大正元年に県内有数の富豪といわれた摺沢村(現一関市、旧千厩町の北隣)の横屋総本家から分家し創業した由緒正しい蔵で、酒蔵と母屋は国の登録有形文化財に指定されているそうです。

上の写真左手の佐藤家住宅主屋は、欅(ケヤキ)の木が贅沢に使われた建物です。左写真の扉はご覧になるとわかると思いますが、ケヤキの1枚板が使われています。

惜しげもなくケヤキを使った贅を尽くした建物からは、「普請道楽」とまで言われた佐藤秀平氏の気概や、職人の心意気が伝わってくるようです。

母屋1つとっても多くの人たちが快適に過ごせられるように、数々の工夫が見られます。写真の床は、夏に快適なように、床下の通気性を考えているそうです。向こうに見える庭も圧巻です。
当時、酒蔵がこの千厩でどのような存在であったのか、それを強く感じながら、立派な母屋の中で一人思いを馳せていました。

母屋を見学させていただいた後、仕込み蔵に移動をしましたが、実は今回の本当の目的はここでした。

現在、この「玉の春工場」は、現在「酔仙酒造 玉の春工場」になっています。
つまり、陸前高田のお酒「酔仙」が、ここで造られているのです。

前の年の東北旅行で呑んで、個人的に思い入れのあるお酒。
そして震災の翌日、3月12日以降、何度もテレビに流された衝撃的な光景。
写真で見た、鉄骨に酒樽がひっかかっている姿。
そのお酒が復活の声をあげた場所に、なんとしてでも来たかったのです。

案内の方が「ここがホームページに載っている集合写真を撮った場所ですよ。」と教えてくださいました。
そうだ、確かに見覚えのある場所です。


中に入ると、甑がありました。ピカピカになるまで磨かれてあり、明らかに最近使われた様子が見られます。
「こちらは酔仙酒造さんの釜ですよ。」との一言に、それだけでも嬉しくなるのはなぜなのでしょうか。


仕込み蔵の中に入ると、ふたをされたタンクが並んでいました。10本ちょっとくらいでしょうか。
「これはすべて『雪っこ』ですよ。」とのこと。
5月に盛岡駅のKIOSKで見つけて狂喜し、でも「しばらく呑めないのかな?」と悲しくなったお酒がこんなにはやく復活するなんて、当時は思いもしませんでした。


酔仙酒造のみなさんは、お休みとのことでしたので、タンクの中を覗くことはできませんでしたが、蔵の中に入ると、タンクの中の酒っこたちが「僕たちは生きてるよ!」って、元気良く活動しているような雰囲気が伝わってきます。
蔵に広がるもろみの香りが、本当に気持ちがいい。
ただただ嬉しくなります。

蒸米の香りや、もろみの香りが漂ってくると、蔵が生きている気がしますね。
お酒の生命力を強く感じる瞬間です、酒もそして造っている蔵も生きているんです。

今回はもろみの様子を直接見ることはできませんでしたが、ただよう香りに酒と蔵の生命力を感じました。本当に満足でした。

「酔仙」は必ず気仙の地に帰ってくる。
そんな希望に満ちあふれて、「酔仙酒造」を後にしたのでした。


その後、「雪っこ」は10月17日から出荷が始まったそうです。
最初の出荷分は岩手県限定だそうですが、きっと多くのみなさんが「雪っこ」を呑んで笑顔になっていることでしょう。
2回目の出荷分からは県外でも購入できるとのこと、早速取り寄せて、半年ぶりとなる「酔仙」を楽しみたいと思っています。


――――
・「酔仙酒造 玉の春工場」
住所 〒029-0803岩手県一関市千厩町千厩字北方134
電話 0191-52-2150(代)

2 件のコメント:

  1. 玉の春の酒蔵によられたんですね。ぼくも以前よりました。liveの手伝いでしたが・・

    写真は http://webryalbum.biglobe.ne.jp/myalbum/100280000d5a5a78660c514c842ffab118c63f430/636421412438616511   です。

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  2. >>ホソピー@江ノ島さん
    コメントありがとうございました。
    隣の見事なホールも見せていただきました。
    写真を拝見しましたが、ライトアップも素晴らしいですね。

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